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風は彼方からやってくる叫びであり
砂漠からやってくる声だ
かぎりないものが砂丘の上で燃えている
それは翡翠の太陽であり
詩的太陽の光線
風はつねに砂をはらみ
砂は太陽の記憶をもつ
ー砂丘で男が空を見上げている
街角で
遠い場所から吹いてきた砂が
あちこちに溜まっていく

「僕は死んだのか。あの月は明るい」アトロは言った。
「月じゃない、太陽さ。月明かりは陽光の残照だ」男は言った。
「太陽?」
「天空で一番明るい星だ」
「僕は太陽を見たことがない」アトロは囁くように言った。
「君と私の世界を隔てるものは、壁とも言えないくらいわずかな厚みでしかない」
男は言った。
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